これまで種苗会社2社(外資系、国内中小)で品種開発を担当してきました。当時の国内種苗会社は品種開発が主体で、朝日工業のように種苗と肥料を扱う総合農業メーカーは稀有な存在でした。当社は肥料メーカーとしては実績がありましたが、種苗事業は海外大手種苗会社と共同開発などを進めてはいたものの後発組だったので、種苗事業強化を模索していました。そこで、ブリーダー(品種開発者)として経験を積んでいた私が種苗開発チームに加わることになりました。私にとっては、これまでのスキルが活かせることに加え、当社が先行していた環境型肥料商品開発などの戦略などを通じ、多面的な視野をもてることも魅力でした。神川農場オープンなど、私にとってはポテンシャルを感じるスタートとなりました。
入社後3~4年間はトマトの共同開発に取り組み、その後はカボチャの育成を担当しました。カボチャの育種は自分でも得意な分野でしたので、自社品種開発や後継品種育成など成果を上げることができたと自負しています。2015年に課長になり、部下にカボチャを引き継ぎました。課長になってからは、自主品種であるカボチャや台木(トマト、キュウリ、メロン)を中心に、共同品種であるブロッコリーなどの育成を総合的に指導・管理しました。
2021年種苗部長に任命され、品種開発からマーケティングまでのマネジメントを担うことになりました。自分たちが手掛けた品種を産地調査し、国内でマーケット展開し、さらに海外販路を開拓するなど、種苗ビジネスをトータルで捉え進めていけるので、やりがいがあり責任も感じます。
1つの品種を開発するには10年前後の時間(品種によってかなり差はある)を要する上、産地の形成、市場開拓などにも時間がかかりますので、実際私たちの品種がスーパーなどに並ぶとガッツポーズを取りたくなります。私たちが最も力を入れているカボチャは徐々に産地に浸透してきており、売上が1億円の大台に達した時は達成感を感じました。特に、沖縄、長崎の抑制栽培で高いシェアを獲得しています。海外では、韓国でシェアを伸ばし、イタリア、フランス、ドイツ、ベトナムにもマーケティングを広げています。私たちの品種と共に、日本の食文化も海外に広げられたら嬉しいと思っています。
一方、高品質の種を産地に供給するためには種の生産が重要ですが、コロナ禍では種の生産現場で栽培指導が行き届かなかったこともあり、予定通りの種が収穫できませんでした。種取りは植物や自然が相手なので想定外のトラブルと対峙することも多く、無事商品となるとほっとします。
大学で生物を学び、幸運なことに、就職後は学んできたことを活かせる品種開発にずっと携わってきました。従って、私にとって品種開発はライフワークと言っても良いかもしれません。今後は、新たな開発の視野を持って、農業の発展に貢献することを目指していきたいと思っています。
仕事終わりや週末などは普通に子供と過ごす時間を大切にしています。家族が応援してくれるから私は頑張れるし、私の努力の向こうには常に家族がいます。
農業に関係している仕事をしていると、緊急の場合を除き、計画性のない休みの取り方はできませんが、仕事で地方や海外に行くことが多く、その地元のものを食べたり、地元の人々と触れ合うのを楽しみにしています。
外資系種苗、中小種苗、農業中堅(当社)と3社経験していますが、当社は色々な職種があり、色々な事業があるので、社内で夢が実現できます。環境に興味があれば、面白い会社だと思います。